1961年のイギリス映画「ミス・マープル/夜行特急の殺人」のあらすじと感想です。
あらすじ・感想
マーガレット・ラザフォード版のミス・マープルです。
マープルさんといえば上品でいつもニコニコしていて誰からも愛される人好きがするタイプというイメージですが、マーガレット・ラザフォードのマープルは正反対ですね。
大柄でしかめっ面をしていることが多いし、かなりの毒舌家です。
ある日、ミス・ジェーン・マープルは列車に乗り目を覚ますと、通り過ぎる列車の中で男が女性の首を絞めているのを目撃します。
すぐに車掌を呼んで報告し、駅に着いたら警察に通報すると言っています。
数日たっても新聞には列車での殺人について載っていません。
クラドック警部補がマープルの家を訪ねて来て、線路沿いを探したが遺体は見つからなかったと言っています。
新婚カップルがいちゃついているのをマープルが見間違えたのではないかと、失礼な言葉を口にして去って行きます。
クラドック警部補の言葉でマープルもちょっと腹を立てていますね。
こうなったら自分で調べるしかないと、友達のストリンガーと一緒に線路沿いで手がかりを追います。
線路から遺体が転がり落ちたような跡があり、壁の近くには毛皮のコートの切れ端がありました。
壁の向こうを見てみようと、ストリンガーがマープルを持ち上げます。
不気味な男と番犬がいて、こっそり忍び込むのは無理みたいですね。
線路沿いでの一連のマープルとストリンガーのやり取りがすごく楽しいです。
ストリンガーはやせ型だし図書館司書で力はなさそうなのに、大柄なマープルさんを持ち上げるなんて意外と力持ちですね。
壁の向こうはアケンソープ家の土地で、マープルはきっと遺体はこの家の敷地の中に隠されていると考えます。
遺体を探すためマープルは斡旋所に行き、アケンソープ家のメイドとして雇ってもらうことにします。
アケンソープ家のエマも心配していたけど、あのお年でメイドとして働くなんてマープルさんは大丈夫なのでしょうか?
いくら健康で屈強な体の持ち主でも、お年はお年ですからかなりキツいと思います。
アケンソープ家の当主は病気で寝てばかりのせいか、口が悪くていつも怒鳴っています。
メイドとしてやって来たマープルにも容赦なく怒鳴り散らしますが、マープルも負けていません。
クビにならない程度にアケンソープ氏を戒めて、言いたい事を言っていますね。
マープルとアケンソープ氏とのやり取りもユーモラスで楽しいです。
ある場面ではアケンソープ氏がお酒を飲もうとしているのですが、マープルは体に良いビーフスープを運んできます。
「頼んだのはステーキでこれは下げてくれ」といつも通り彼が怒鳴ると、マープルはお酒のボトルとグラスを下げてしまいます。
かんしゃく持ちのわがままおやじにいい塩梅で逆らって、お灸をすえている感じでしょうか。
甥っ子のアレクサンダーはいたずらっ子です。
マープルがゴルフの練習をしていると、わざと玉を違う方向に飛ばしていると気づきます。
アレクサンダーの言う通りマープルは遺体を探すために変な方向にボールを飛ばし、ボールを取りに行ったふりをして遺体探しをしていました。
アレクサンダーはなかなか鋭い子ですね。
ちょうど小屋がありアレクサンダーを上手に説得して中に入り込みます。
祖父の時代に使っていたものが保管されているそうです。
もう1つ奥に扉があったのですが、ちょうど庭師がやって来て追い出されてしまいます。
夜になり、マープルは小屋の奥の鍵を開け、中を調べ始めます。
エジプトの美術品が保管されていて、棺の1つに女性の遺体を見つけてしまいました。
マープルはストリンガーに連絡し、匿名で警察に通報してくれと頼みます。
原作ではマープルさんのお友達エルスペス・マギリカディが目撃したことになっていましたが、この作品ではマープルさん自信が目撃者になっています。
さらに、お屋敷でメイドとして働くのもマープルさん自身だし、あちこちアクティブに動き回って調査を行います。
一応、マープルさんの家にはルーシーという名のメイドはいるんですが、冒頭にちらっと出て来ただけで終わりました。
エネルギッシュすぎるほどのマープルさんでしたが、とても楽しんで見ることができました。
犯人と対峙して会話するシーンは本来のマープルさんらしい鋭さと冷静さを感じたし、謎解きがカッコ良かったです。
お友達のストリンガーとのコンビは抜群で、もっと2人のユーモラスな絡みが見たかったですね。
マープル役のマーガレット・ラザフォードとストリンガー役のストリンガー・デイヴィスは実生活では夫婦で、息もぴったりでした。
通いのメイド役で、若き日のジョーン・ヒックソンさんが出ていて、優しげでどこかクールな目元はお年を召しても変わらないなって感じました。
キャスト
ミス・ジェーン・マープル – マーガレット・ラザフォード
ポール・クインパー医師 – アーサー・ケネディ
エマ・アケンソープ – マリエル・パヴロー
ルーサー・アケンソープ – ジェームズ・ロバートソン・ジャスティス
セドリック・アケンソープ – ソーリー・ウォルターズ
クラドック警部補 – チャールズ・ティングウェル
ハロルド・アケンソープ – コンラッド・フィリップス
ブライアン・イーストリー – ロナルド・ハワード
キダー夫人 – ジョーン・ヒックソン
ジム・ストリンガー – ストリンガー・デイヴィス
アレクサンダー・イーストリー – ロニー・レイモンド
アルバート・アケンソープ – ジェラルド・クロス
ヒルマン – マイケル・ゴールデン
ヒルダ・ステイントン夫人 – バーバラ・リーク
ベーコン – ゴードン・ハリス
ビンスター夫人 – リチャード・ブライアーズ
ルーシー – ルーシー・グリフィス
作品データ
原題:Murder, She Said
製作:1961年/イギリス
監督:ジョージ・ポロック
脚本:デヴィッド・パーサル、ジャック・セドン
原作:アガサ・クリスティ「パディントン発4時50分」
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