血に笑ふ男(1937)

血に笑ふ男 アガサ・クリスティー

1937年のイギリス映画「血に笑ふ男」のあらすじと感想です。
宝くじに当たった女性が素敵な紳士と出会い、恋に落ちて結婚。女性は夫が殺人鬼だとは全く気付かず、静かな新居で新婚生活を始める。

あらすじ

キャロル・ハワードは友達のケイト、いつもどこかしらが痛いという叔母ルーと共に小さなアパートで、貧乏生活を送っている。

ある日、仕事に行くとキャロル宛に郵便が届いていた。
フランスの宝くじが当たったという当選のお知らせで、キャロルは大喜び。

ケイトに宝くじが当たったとを話し、あれこれお金の使い道を相談して一緒に喜び合う。
婚約者のロニーにも話して一緒に世界を旅しようと誘うが、真面目な彼はキャロルとは意見が合わず婚約解消となってしまう。

キャロルとケイトは船に乗ってフランスに行く予定で、同じ船にジェラルド・ラヴェルが乗っていた。
彼はキャロルの住んでいるアパートを内見しに来たことがある。

ロマンチックなジェラルドにキャロルはどんどん惹かれていき、船旅でお互いの距離が縮まる。
ロニーがキャロルに会いに来て前回のことを謝り再び愛を告白するが、キャロルはすでにジェラルドと結婚した後だった。

新婚でアツアツのジェラルドとキャロルは、2人きりで過ごせるように静かな場所にある家を買うことに。
ジェラルドは仕事の関係でお金が使えずキャロルがお金を貸すことになり、書類にサインをする。

雑感

アガサ・クリスティー原作だからちょっと好奇心にかられて見てみたくなりました。
クリスティーもの特有のミステリーやトリックはまるでなかったけど、終盤はハラハラしてエンディングが気になりましたね。

メイドのエミー役で、数十年後にミス・マープル役を演じることになるジョーン・ヒクソンさんを見られたのはラッキーです。
役柄のせいもあるけど、愛らしくてとてもキュートでした。

キャロルが当たった宝くじは現代だと、どれくらいの金額なんでしょう?
殺人鬼が綿密に計画を立てて狙うくらいだから、一生遊んで暮らせるくらいの額なのかな?

今まで苦労してきた分、キャロルはおばさんや友達のケイトにも恩返ししていたし、ジェラルドが資金不足になった時にもすぐにお金を貸し、心が広くて他人を思いやることができるのが素晴らしいですね。

最初に部屋を借りたいとやって来た時から、ジェラルドはキャロルを狙っていたみたい。
キャロルは今でいう貧乏暮らしの普通のOLだから、自分の知らない優雅な世界を詩的に語るお上品なジェラルドは、相当魅力的に見えたんでしょう。

反対に婚約者のロニーは現実的で、旅行に誘っても一緒に来てくれる様子はなし。
この時代はまだ社会的に、長期休暇を取るなんてもってのほかっていう風習なのかしら。

出会ったばかりだけどジェラルドの影響をすでに受け始めているキャロルは夢やロマンを追い求めたくて、それを批判するロニーは運命の人じゃないと思ったのでしょう。
大金を得てしまったがために、今までの幸せでは満足できなくなってしまいました。

ロニーとは子供の頃からの知り合いみたいだし婚約してから3年も経っているのに、こんな事で婚約解消にしちゃうなんてもったいない!
お互いに信頼関係があるから、話し合えばすぐに解決できそうなのに。

イギリスの家を買うまではジェラルドも本性を出さずに紳士的にふるまっていたから、一緒にいたケイトもジェラルドが危ないヤツだとは気づきもしませんでした。
キャロルとロニーの仲を応援していたから、ジェラルドにちょっとでも変なところがあれば反対していたでしょう。

家を買って暮らし始めてからがジェラルドにとっての本番開始。
獲物が自分のテリトリーに入ったから気を許して、ちょいちょい本性が見え始めました。

キャロルも「ちょっとおかしいぞ」と感じ始めていたけど、ジェラルドの本当の狂気はまだ本格化していないし病気のこともあるから、そんなに警戒していた様子はなかったですね。

お互いのことをまだ理解できていない新婚さんだし、別れようなんて気も起きなかったでしょう。

縁日の夜、全てが明らかになりました。
夫が殺人鬼だとわかり今にも自分が殺されそうな状況で、キャロルはよくがんばったと思います。

相当恐怖を感じていただろうし、普通の女性ならパニックになっていたでしょう。

命がかかっているわけだし苦し紛れだったかもしれないけど、彼女なりに策を講じて生き延びようという強さを感じましたね。
泣き落としやすがるのは通じない、逆に脅すのはあり?と頭をフル回転させて、最後にはジェラルドに勝利しました。

クライマックスに向けての盛り上げ方も良かったし、古い映画だけど十分楽しめました。

キャスト

キャロル・ハワード – アン・ハーディング
ジェラルド・ラヴェル – ベイジル・ラスボーン
ケイト・メドウズ – ビニー・ヘイル
ロナルド・ブルース – ブルース・シートン
ルーおばさん – ジーン・キャデル
グリブル先生 – ブライアン・ポウリー
エミー – ジョーン・ヒクソン
ホブソン – ドナルド・カールロップ
タトル氏 – ユージン・レイフィー

作品データ

原題:Love from a Stranger
公開年:1937年
監督:ローランド・V・リー
脚本:フランシス・マリオン
原作:アガサ・クリスティ「ナイチンゲール荘」

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