アガサ・クリスティー ミス・マープル、シーズン4第1話「ポケットにライ麦を」のあらすじと感想です。
金持ちの実業家がオフィスで毒殺され、上着のポケットからライ麦が見つかる。その後、彼の若き妻、彼の屋敷の小間使いと立て続けに殺されてしまう。
あらすじ
実業家のレックス・フォーテスキューがオフィスで紅茶を飲んだ直後に死亡し、最初は紅茶に毒が入れられていたと疑われる。
捜査を担当するのはニール警部で、彼の部下がレックスのポケットにライ麦が入っているのを発見する。
検査の結果、フォーテスキューはタキシンという毒で殺され、効き目が表れるのには2、3時間ほどかかる。
つまり、毒はオフィスの紅茶ではなく、フォーテスキューが食べた朝食の何かに含まれていた。
タキシンはイチイという植物から採れる毒で、レックスの屋敷はこの植物が植えられていてイチイ荘と呼ばれている。
一番怪しいのはフォーテスキューより30歳は年下の若き妻アデールで、ゴルフコーチと不倫している様子だ。
夫の死でアデールは多額の遺産を相続することになり、動機もある。
その後、アデールは毒の入った紅茶で殺されてしまう。
アデールが殺されたのと同じ日、物干し場でメイドのグラディスが首を絞めて殺され、鼻を洗濯バサミではさまれていた。
一連の事件は三重殺人として新聞に載り、これを呼んだミス・ジェーン・マープルはフォーテスキュー家へやって来る。
グラディスは身寄りがなく17歳で、メイドとして仕込んだのはミス・マープルだった。
かわいそうなグラディスがなぜ殺されてしまったのか、他の事件との関連などを調べようとしている。
さっそくマープルはニール警部に会い、3つの殺人は童謡「6ペンスの歌」になぞらえた見立て殺人だと話す。
酒に酔った執事のクランプが黒ツグミのことを口にしていた。
警部とマープルは黒ツグミについて、フォーテスキューの家族や関係者に聞いてみることに。
過去にあったクロツグミ鉱山のトラブル、フォーテスキューの引き出しに黒ツグミの死骸が入れられていたいたずらなどが表ざたになる。
雑感
シーズン4からミス・マープル役がジュリア・マッケンジーに代わり、その第1作目です。
より人当たりがよく柔和な感じが出ていて、本当に優しいおばあさんという印象です。
彼女になら誰も警戒せず、本音をポロポロと話してくれそうですね。
オーソドックスなミステリー作品として秀逸だし前シーズンのような奇抜さがないので、安心して見ることができました。
冒頭のマープルさんがグラディスを送り出すところから始まり、手紙で締めくくられるという作りがすごく良かったです。
マープルさんがどこに行ってもしかりと働けるように小間使いとしてグラディスを仕込み、養護施設で育ったという生い立ちもあり、困った事があったらいつでも連絡するようにと言ってあったんじゃないでしょうか。
17歳という若さで未来はこれからという時だったからこそ、余計に腹立たしいです。
マープルさんはいつも通りスルスルとフォーテスキュー家の中に入り込み、色んな情報を仕入れてきます。
ちょっと積極的に突っ込んだことをマープルさんが聞いたとしても、娘同然だったグラディスを失ったおばあさんだから仕方ない、ですんでしまいそう。
今回はニール警部との連携も最初からうまく取れました。
最初にマープルさんは警部をほめちぎっていい気分にさせた上で、いかに自分が情報収集に向いているかを強調していました。
半ば警部を丸め込んだ感じでしたけど、これもマープルさんの手腕の一部ですね。
エンディングの手紙を読んでいるマープルさんのシーンはやはり感動します。
グラディスがひとり立ちするオープニングがあったからこそ、さらによさが伝わってきました。
お気に入りのシーンは、警部と巡査部長がチョコを食べているジェニファーの事情聴取しているところです。
警部はナッツ入りのチョコを食べることができたけど、最初から食べたそうだった巡査部長は手を伸ばしかけては引っ込めてで、最後まで食べることができなかったのが面白かったです。
キャスト
■ ミス・ジェーン・マープル – ジュリア・マッケンジー
自分が仕込んだ小間使いグラディスが殺され、調べるためにイチイ荘へ。
三つの事件は「6ペンスの歌」の見立て殺人だと警部に報告する。
■ グラディス – ローズ・ヘイニー
フォーテスキュー家の小間使い。
物干し場で首を絞められ、鼻を洗濯バサミではさまれて殺される。
■ ミス・グロヴナー – ローラ・ハドック
レックス・フォーテスキューの秘書。
■ レックス・フォーテスキュー – ケネス・クラナム
金持ちの実業家。
朝食に何か入れられ、毒殺される。
■ ティリー – ティア・コリングス
ミス・マープルが仕込んでいるメイド。
フォーテスキュー家から戻ったマープルに手紙が来ていると伝える。
■ パット・フォーテスキュー – ルーシー・コーフー
ランスの妻。
最初の夫は戦死、次の夫は自殺している。
■ ランス・フォーテスキュー – ルパート・グレイブス
フォーテスキュー家の次男。
最近までケニアに住んでいて、父親が死んだ翌日に帰国する。
■ ニール警部 – マシュー・マクファディン
レックス・フォーテスキューらの殺人事件を捜査中。
マープルの実力を認め、協力して捜査を進める。
■ バーンズドーフ教授 – エドワード・チューダー=ポール
病理学者。
フォーテスキューの死因となった毒を特定する。
■ ピックフォード巡査部長 – ラルフ・リトル
ニール警部の部下。
捜査に常に同行し、供述などをメモしている。
■ メアリー・ダブ – ヘレン・バクセンデイル
フォーテスキュー家のハウスキーパー。
沈着冷静で、仕事は仕事と割り切っている。
■ クランプ – ケン・キャンベル
フォーテスキュー家の執事。
酔ってマープルに黒ツグミについて触れる。
■ アデール・フォーテスキュー – アンナ・マデリー
レックスの若き後妻。
紅茶に毒を入れられて死亡する。
■ ビビアン・デュボワ – ジョセフ・ビーティー
ゴルフコーチ。
アデールと不倫しているらしい。
■ クランプ夫人 – ウェンディ・リチャード
フォーテスキュー家の料理人。
グラディスの様子がおかしいことに気づく。
■ パーシバル・フォーテスキュー – ベン・マイルズ
フォーテスキュー家の長男。
父の会社の共同経営者で、堅実で真面目なタイプ。
■ ジェニファー・フォーテスキュー – リズ・ホワイト
パーシバルの妻。
元看護師で、パーシバルが肺炎で入院したのがきっかけで結婚した。
■ エレイン・フォーテスキュー – ハティ・モラハン
フォーテスキュー家の末っ子。
父親に恋人との結婚を反対されていた。
■ ビリングスリー – ポール・ブルック
フォーテスキュー家の弁護士。
■ ジェラルド・ライト – クリス・ラーキン
エレインの恋人。
彼女の父の死後、電報で呼ばれてやって来る。
■ ミセス・マッケンジー – プルネラ・スケイルズ
クロツグミ鉱山の件で夫が死亡し、レックスを恨んでいる。
作品データ
原題:A Pocket Full of Rye
放送日:2008/11/8
監督:チャーリー・パーマー
脚本:ケヴィン・エリオット
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