1937年のアメリカ映画「血に笑ふ男」のあらすじと感想です。
あらすじ・感想
キャロル・ハワードはルーおばさんと友達のケイトと、3人でアパートで暮らしています。
ものすごく貧しいというわけではないけれど、節約しながらがんばって生活しているという感じ。
キャロルとケイトはものすごく仲良しみたいだけど、おばさんがちょっと曲者感がありますね。
日によってあそこが痛いとかここが痛いとか言って、キャロルやケイトを困らせているけれど、2人ともおばさんの扱いには慣れています。
キャロルは仕事に行って手紙を開けると、フランスの宝くじが当たったというお知らせが来ていました。
まさか本当に当たったの?と注意深く当選番号を確認してみると、番号が同じです。
そのまま家に帰ってケイトに報告。
2人で涙を流して喜び合う姿がとても素敵ですね。
2人でシャンパンを抜いてお祝いするんだけど、「ポン」という音だけ聞いたルーおばさんは銃に撃たれたと思ったみたい。
その表情や様子がとてもコミカルで面白いです。
ルーおばさん、いい味出していますね。
キャロルとケイトはパリに行くことにして、アパートは貸すことにしました。
さっそくアパートを借りたいという紳士ジェラルド・ラヴェルがやって来ます。
世界各国を旅して来たけど、懐かしのロンドンに落ち着きたいんだとか。
色んな国のことをロマンチックに語り、世界に飛び出したいと思っていたキャロルにはとても魅力的に聞こえます。
ちょうどフィアンセのロニーがやって来て、ラヴェルさんは「また後で」と帰って行きます。
ロニーに宝くじが当たったことを報告して一緒に旅をしたりして過ごそうとキャロルは誘うけど、ロニーは同意してくれません。
キャロルの世話になるのが嫌みたいです。
男としてのプライドがあり、俺がキャロルを幸せにすると思っているのかもしれませんね。
2人はけんかになってしまい、お金のせいで婚約解消してしまいました。
気を取り直して、キャロルとケイトは船でパリへと向かいます。
同じ船にアパートを見に来たジェラルドもいて、積極的にキャロルにアプローチ。
キャロルとケイトを楽しませているようですね。
パリのアパートにロニーがキャロルを訪ねて来ました。
ケイトからロニーはキャロルの近況を聞いて、心配になったみたいです。
ジェラルドのことを調べて危ないヤツだってキャロルに警告するんですが、余計にキャロルを怒らせてしまいます。
元婚約者が恋した男性のことをあれこれ調べていたら、誰だって腹が立ちます。
キャロルは今朝、ジェラルドと結婚したとロニーに伝えると、ロニーはすごすごと帰っていきました。
時すでに遅しで、もう少しロニーが早くキャロルを取り戻しに来ていたら、事態は変わったかもしれませんね。
ケイトとルーおばさんがキャロルの様子を見に来ます。
ルーおばさんは相変わらずで、あちこち痛いと言ってます。
おばさんは食いしん坊みたいでチョコを何個も食べたり、キャロルにすすめられた軽食は全部食べたいと遠慮なんかまったくしません。
こんなユーモラスなところがおばさんらしいですね。
ジェラルドに問題発生で、キャロルと一緒に住む家のお金が払えなくなってしまいました。
宝くじを当てたキャロルはお金に余裕があるから出すと言ってくれるけど、ジェラルドは心苦しいので借りるだけだとのこと。
書類がすでにあり、キャロルにサインさせます。
キャロルは夫を信頼しているから、家を買うための書類だと思って中身を読まずにサインしてしまいました。
キャロルが部屋を出ていった後のジェラルドの目つきがすごく怖かったです。
多分、キャロルの全財産を手に入れるための書類に、サインさせたんじゃないかなって思います。
ジェラルドは絶対に怪しいです。
この辺りから、ジェラルドのほころびが見え始めます。
キャロルとジェラルドは新居をかまえます。
人里離れた静かな場所にあり、車も電話もなし。
2人きりの新婚生活を邪魔されたくないとか、ジェラルドの体のためとか理由をつけているけれど、ジェラルドが外部と一切連絡が取れない家を選んだってことでしょうね。
キャロルはまだまだ新婚気分だから、家を見て素敵だと喜んでいます。
執事っぽい人とメイドさんしかいなくて、こじんまりした家というより殺風景で陰惨な雰囲気に見えました。
この家で暮らし始めてから、ジェラルドの狂気がじわじわとにじみ出てきます。
キャロルがアップテンポな曲をピアノで弾いていたら「もっと早く、もっと」と早く弾かせようとします。
その時のジェラルドは完全におかしくなっていたし、その後に語った戦争の時の話も加わってじわじわと恐怖を感じました。
キャロルはジェラルドの怒りを目にしてしまいます。
ワインセラーは彼の聖地で、誰も入ってはいけない場所。
写真を現像してクシャクシャっと丸めていると、後ろに偶然、キャロルが立っていました。
ジェラルドはものすごい形相で「出て行け」と怒鳴り、キャロルは初めてこの時、ジェラルドに対して恐怖を感じたのではないでしょうか。
後からジェラルドは謝って病気のせいだと言い訳して、今度は1人にしないでくれと泣き落としにかかります。
優しいキャロルはジェラルドを受け入れて、何とか助けてあげなきゃという気持ちになってしまいます。
本領を発揮したジェラルドの狂気と、追い詰められていくキャロル。
この2人のやり取りがとても見事で、終盤は目が離せません。
キャロルもサイコ男目をつけられて、とんだ目にあってしまいました。
普通はパニックになるところですが、キャロルは恐怖を感じながらもよくがんばりましたね。
本筋とは関係ないですが、メイドのエミー役が数十年後にミス・マープルを演じることになるジョーン・ヒクソンさんだったのがうれしかったです。
クライマックスに向けての盛り上げ方も良かったし、古い映画だけど十分楽しめました。
キャスト
キャロル・ハワード – アン・ハーディング
ジェラルド・ラヴェル – ベイジル・ラスボーン
ケイト・メドウズ – ビニー・ヘイル
ロナルド・ブルース – ブルース・シートン
ルーおばさん – ジーン・キャデル
グリブル先生 – ブライアン・ポウリー
エミー – ジョーン・ヒクソン
ホブソン – ドナルド・カールロップ
タトル氏 – ユージン・レイフィー
作品データ
原題:Love from a Stranger
製作:1937年/アメリカ
監督:ローランド・V・リー
脚本:フランシス・マリオン
原作:アガサ・クリスティ「ナイチンゲール荘」
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